最近よく目にする「TOB」のメリット・デメリット、友好的/敵対的TOBについて解説!

最近TOBに関するニュースを目にする機会が非常に増えています。大戸屋とコロワイドのTOB成立のニュースなどよく目にしますよね。TOBは上場企業の経営方針に大きく関わる出来事であるからこそメディアは取り上げ、多くの人が注目します。ちなみに昨年2019年は年間で40件以上のTOBが成立しています。企業の合併・M&AのイラストTOBはM&A(企業買収/合併)の手法の内の一つです。経営者にとってはもはや他人事ではありませんし、こういうニュースを正しく理解するうえではTOBのメリット・デメリットを正しく認識することが必要です。

この記事ではそもそもTOBってなんだ?というTOBの概要や買い付けを行う会社や買付される会社(以下、対象会社)のメリットデメリットについて。また買付の対象会社の株主にとってのメリット・デメリット、友好的・敵対的TOBの意味や、TObが成立した時の買主の動きを解説します。

そもそもTOBとは

TOBの略は(Take Over Bid)。和訳すると「株式公開買付」です。これは買付期間や価格、株式数を新聞などで公告したうえで、売主の株式を証券取引所を通さずに大量に買い付けることを意味します。

目的は「対象会社の経営権・株主総会における特別決議の否決権の取得」になります。一般的にTOBにおける買付価格は市場の取引株価よりも高く設定されます。ですので対象会社株の保有車は市場で株を売るよりも特になるといえるでしょう。two people shaking hands

そのため売主が株式売却を判断する可能性が上がると同時に、飼い主は一定の株式量を集められる確率が上がります。この上乗せ分は「プレミアム」と呼ばれています。

そしてTOBは「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類に分けられます。友好的TOBは買主・売主・対象会社の当事者全員から合意がある状態での成立であり、敵対的TOBはその合意がなく、買主が一方的に対象会社の経営権を得るために株式を買い付ける場合を指します。

TOBの目的は経営権を取得すること

TOBの主たる目的は、株式を取得して「経営権を得る」ことです。会社法上では、企業の株式の50%を超得て保有することで、株主総会の普通決議を単独で可決することができます。つまり株式を保有した企業の経営権を取得できるということです。また、企業の株式を3分の1超保有することで株主総会の特別決議拒否権を手にすることができます。

そして金融商品取引法では、上場企業の株式取得を行った際、株式取得後の株式の所有割合が3分の1を超える場合には、その株式取得はTOBで行わなければならないと定められています(金融商品取引法第27条の2第1項第2号)。person using phone and laptop computer

仮に強制的にTOBを行う必要がない株式取得であったとしても、証券取引所を通した取引の場合、株式の供給量に対して莫大な量の買い注文を行うことは避けるべきです。なぜなら、自分自身の買い注文で株価が急上昇し、想定していた価格で株式を購入できないリスク(これを「マーケットインパクト」といいます)があるためです。

なお、公開買付けによる場合、買付け予定の株券等の下限を設定することができるため、想定する支配権獲得の程度に至らない場合には、応募された株券等の買付けを一切行わないことも可能です(金融商品取引法第27条の13第4項1号)。

友好的TOBと敵対的TOBについて

TOBには、友好的TOBと敵対的TOBの2種類があります。友好的TOBとは、株式の買収について対象企業の経営陣の了承を得ているTOBを指します。例として、グループ企業の完全子会社化等が当てはまります。

一方で、敵対的TOBとは、対象企業やその大株主へ事前の合意や通知なしに仕掛けるTOBを指します。多くの場合、ライバル企業などの経営の支配力を握ることが目的です。

TOBのメリット・デメリット

買主にとってのメリットとデメリット

ここでは買主側にとって代表的な2つのメリットと1つのデメリットを紹介します。

まず1つ目のメリット
あらかじめ計画した期間・金額・株式数で、大量の株式を一度に買い取ることができる点があげられます。

通常、証券取引市場を通して株式の大量注文を行うと、自身の買い注文が原因で株価の急激な上昇が起こり、最終的に予想以上の費用で株式を買付けることになる可能性があり、株式の取得に要する費用が最後まで読めないという不確定要素がつきまといます。その点、TOBでは一定価格で株式を買付けるため、株式の取得に要する費用が最初からほぼ確定できることがメリットになります。

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2つ目のメリット
不必要なコストをかける必要がない点です。

募集する株式数に上限・下限を設けることができます。例えば、51%の株式を集めたい場合には上限・下限を51%に設けることで募集した株式数を超えるもしくは満たない場合には取得しないことも可能です。そのため小さいリスクで株式を取得することができます。

ただし、全株式のうち2/3以上を上限とすることはできません。2/3以上を取得したい場合は100%取得する必要があります。(これを全部買付け義務といいます)。そして、TOBを行う際には公開買付代理人業務を証券会社に依頼する必要があります。TOBが不成立でも報酬を支払う必要があるため、リスクが全くないわけではありません。

一方で、デメリットとしては対象会社や競合他社による買収防衛策によって買付けが失敗に終わる可能性があげられます。友好的TOBであっても競合他社による介入も起こり得ます。先述の通り、防衛策は複数の手法が存在し、防衛策によって買主が被る損失の内容は変化します。

対象会社にとってのデメリット

対象会社にとって、TOBはあまりメリット・デメリットはありません。しかし、TOBが実施される際には、買主の申請手続きに対して意見表明書を提出する義務があります。その分手続きに時間を割く必要があることは留意しておくべきでしょう。

TOBが実施されたときの売主の動き

ここでは、TOBが実施された際の売主の動きについて解説します。

売主はTOBの発表を受けた際、以下の3つから選択することになります。

1「TOBに応じる」
2「TOBに応じずに取引市場で株式を売却する」
3「TOBに応じずに保有し続ける」

まず、1を選んだ場合には、プレミアムが付いた価格で株式を売却できる可能性があります。また、証券取引所を通して売却した際にかかる売買手数料がかかりません。このことから金銭面に関しては、売主にとっては非常に魅力的な取引となります。

次に2を選んだ場合には、基本的に市場価格で株式を売却することになります。ただしTOB実施後、敵対的TOBや物言う株主の参入により、価格が大きく変動する可能性があるため注意が必要ですperson holding white Samsung Galaxy Tab

最後に3を選んだ場合、売主は手続きをする必要はありません。しかし、以下の2点に気をつける必要があります。

1つめに、TOB後に対象会社が上場を維持する場合、プレミアム付きTOBを行うと、終了後に株価が低下します。多くの場合、元々の市場価格に近づく傾向にあります。

2つめに、TOB後に対象会社が上場廃止する場合、TOBに応じなくても強制的にTOBの価格で株式は売却されます(これをスクイーズアウトといいます)。この時、株式を購入した際の価格よりも安い価格が付く可能性があります。そのため、TOBが成立する可能性が高い場合には結果を待たずに株式を売却する方が良いでしょう。

まとめ

今回は、TOBについてのメリット・デメリット、友好的・敵対的TOBの意味や防衛策、TOBが実施される場合の売主の動きについてまとめました。
計画通り株式の買付けがしやすいことと、原則として狙った株式数を取得できるように上限・下限を設定できることTOBの最大の特徴です。この記事で紹介したようなメリット・デメリットを理解した上でTOBの実施へ進みましょう。

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